楽器やスピーカーをPCに接続してDTMや実況を行うにはUSBオーディオインターフェースが必要です。ヤマハやローランド、ZOOMといった有名メーカーから多様な製品が販売されていますが、これから初めて手にする方におすすめの製品をDTM経験者目線でご紹介し、選び方や基礎知識を解説します。
目次
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オーディオインターフェースの選び方
はじめに
オーディオインターフェースがあると、楽曲製作に適した品質での録音や音のチェックを行うことができる。
オーディオインターフェースとは、PCなどのデバイスと音響機材を接続するための入出力端子、そしてプロセッサーを備えた機器だ。オーディオI/Fと略されることが多い。
エレキギターやマイクの信号をデバイスに入力したいとき、またデバイスからスピーカーや機材に信号を出力したいときに使う。
入出力端子の形状や数は製品よって異なり、接続できる音響機器も違ってくる。
プロセッサーはデバイスの代わりに音声信号を処理し、より高音質な録音・再生を可能とする。
目的に応じて様々な製品が販売されているが、大きくカテゴリ分けすることができるので自分の目的と照らし合わせてみよう。
ステップ①オーディオインターフェースの種類
対象者 | 特徴 | 最適なシーン |
---|---|---|
初級者 限定用途 |
卓上設置しないアダプター型のもの。 |
実況・簡易的に録音を行いたい 接続したいものが明確に1つだけある |
初〜中級者 | 卓上設置できる小型のもの。 LINE入出力、マイク入力、ツマミ等がある。 I/F数は少ないが多機能である。 |
本格的な実況をはじめたい DTMをはじめたい |
中〜上級者 | 高度なミキサー機能を備えたもの。 マルチチャンネル入出力に対応する。 |
本格的なDTMをはじめたい バンド演奏の録音をしたい 既存機器ではI/Fが足りない |
おすすめは初〜中級者
初〜中級者を対象としたオーディオI/Fは、統合的な楽曲制作に最適なデザインがされている。
ニーズの高いI/Fや機能を一通り備えているので、個人での利用だと大抵の制作場面で事足りる。
アダプター型のものは、楽曲制作を完結するには完全にI/Fが不足している。
逆に入出力が多すぎる上級機種は持て余してしまうだろう。
ただし初心者向けオーディオI/Fと評判のものはおすすめしない。早い段階で不満が出てきて買い替えたくなるからだ。
無駄な出費を避けるためにも、自分の知識、技術、耳がレベルアップすることを見越して中級者も使えるような機種を選ぼう。
ステップ②必要なインターフェース
実況や歌ってみたをやるなら
絶対に必要なI/Fは「ファンタム電源」対応のマイク入力だ。
マイク入力端子にはXLR端子と、コンボ端子※1 があるが、コンボ端子だと汎用性が高くてなお良い。
ファンタム電源とはコンデンサーマイクを利用するのに必要となる。ダイナミックマイクには不要。
追加投資を避けるためにも、ファンタム電源対応はほぼ必須と考えよう。
※1:XLR端子とフォーン端子のどちらもさせる端子。
▲ (左)フォーン端子、(中)キャノン端子=XLR端子、(右)コンボ端子
DTMをやるなら
DTM向けに必要となる端子を優先度順に並べた。
主な端子の種類 | 優先度 | 意味 |
---|---|---|
ライン出力 (RCA端子) |
★★★★ | モニタースピーカーを接続するために必要。 楽曲制作において何があっても外せない要素。 |
ヘッドホン出力 | ★★★★ | モニターヘッドホン・イヤホンを接続するために必要。 ヘッドホンで伴奏を聴きながらレコーディングするには欠かせない。 スピーカーが使えない場合はこちらを利用して楽曲の仕上げを行う。 |
ライン出力 (フォーン端子) |
★★★☆ | こちらも主にスピーカーへの出力用途。 RCA端子しかないスピーカーもあるので少々面倒。 バンド活動でPAシステムへの接続する場合などに便利。 RCA端子出力がない場合には必須。 |
マイク入力 | ★★★☆ | マイクを使う方は勿論、使用予定のない方でも今後を考えると欲しい端子。 大抵のオーディオI/Fに備わっている。 ファンタム電源対応は必須 端子数節約のためにコンボ端子が理想。 |
ライン入力 (フォーン端子) |
★★★☆ | エレキギターやシンセサイザーから音声入力する際に必要。 電子楽器奏者には必須の端子。 端子数節約のためにコンボ端子が理想。 マイクも使う場合は同時に使う端子数に注意。 |
ライン入力 (RCA端子) |
★★☆☆ | ミキシング用途の端子。 音楽プレーヤーなどオーディオデバイスからの入力に使う。 |
光入力 | ★☆☆☆ | デジタル信号を入力し、アナログ信号に変換するための端子。 楽曲制作ではあまり使用しない。 オーディオ機器やPS4等のゲーム機のサウンドを高音質に取り込める。 |
MIDI入出力 | ★☆☆☆ | MIDI対応機器の操作と、機器からの操作受付を行うための端子。 最近ではUSB接続のMIDI機器が増えたので使用頻度は低くなった。 古いマシンやシンセサイザーを使う方、MIDIコントローラーでリアルタイムにソフトウェアエフェクターも操作したいギタリストなどはあった方がよい。 |
フットスイッチ端子 | ★☆☆☆ | フットスイッチを使う方用の端子。 単純なミュートスイッチからコントロールペダルなど接続。 実況中や演奏中に足元で操作したい場合に必要。 |
ステップ③PCとの互換性
対応OS
手持ちのPCで使えるかどうかは必ず確認しよう。
多くのインターフェースがWindowsやMacに対応しているが、古いモデルのデバイスだと要注意だ。
PCとの接続方法
何も考えずにUSB接続のものを選ぼう。
他の接続方法に対応した製品もあるが、Apple規格のFirewireは過去の遺産であり、Thunderboltも新型Macbookでは廃止されてしまった。
汎用性の高いUSBが最も投資保護となる。
ステップ④付属ソフト
殆どのオーディオインターフェースには楽曲制作用のソフト、通称「DAW」が付属する。
代表的なソフトは幾つかあるが、それぞれ特徴があるので簡単にご紹介する。
筆者としてはAbletonのLiveがおすすめ。
CUBASE | 打ち込み向き。 Perfume等の楽曲を手掛ける中田ヤスタカ氏のメインソフト。 |
Live | ループを使った打ち込み向き。 他のDAWとは操作感が異なる。 リアルタイムパフォーマンスに特化。 利用者はDJが多い。 |
SONAR | CUBASEと並んで人気。 こちらの方がレコーディング向き。 スタジオでよく使用される。 LE版はまともなプラグインがなく、初心者には少し辛い。 |
Protools | レコーディングに特化したDAW。 スタジオでよく使用される。 付属しているのはほぼ自社デバイス。 |
▼ 参考:Liveが得意なスタイル
おすすめのオーディオインターフェース
YAMAHA AG06
<ずっと使えるベストバイ製品>
とにかく出来ることが非常に多いミキサー兼オーディオI/F。
予め設定したエフェクトをボタン1つで使えるなど、ウェブキャストを念頭に置いて作られた製品。
DTMerにとってもミキサーはあると本当に便利。ヘッドホンアウトとラインアウトの出力が独立して調整できるなど使ってみると便利さを実感するだろう。
PCだけでなくiPhone/iPad用のオーディオインターフェースとしても使うことができる。しかもループバック機能もあるので実質7chミキサーだ。
スタンドアロンでも動作するので、単純にミキサーとしても役立つ。
筆者の場合、iPhoneアプリのシンセ音を取り込んだり、そうしたサウンドをモニターしながらギターを録音するために使う。
兎に角これ1つあればニコ生配信主やDTMerは当面は追加投資をせずに済むだろう。
スペックに対して破格のコストパフォーマンスを誇る、最もおすすめしたいインターフェースだ。
デザインが許容できるなら初音ミクおためしセット(販売サイトへ)もおすすめ。
Roland QUAD-CAPTURE UA-55
<絶対に失敗のない超定番モデル>
これという欠点が見当たらない万能モデルで、オーディオI/Fの基準点に位置づけられるような製品。
UAシリーズは10年以上前から進化を続けてきたDTM界では非常に信頼のおけるシリーズの1つだ。
筆者は今でも初代機をオプティカル用のDACとして使っている。
本機はループバック機能や、入力レベル自動補正など下位モデルには無い機能があり、本格的な利用に耐える。
音質もよく安定性にも長けており、特にマイク録音はクリアー。
最近付属ソフトがSONAR LEからAbleton Live Liteに変更になったが、これは嬉しいポイント。
旧モデルと比べて、デジタルIN/OUTが光からコアキシャルに変わってしまった点が唯一残念な点。
光を使わない方にとっては特にデメリットとならないだろう。
基本的な機能を抑え、DTM向けの高音質をもつ本機は、何年も使えるパートナーとなってくれるだろう。
Steinberg UR28M
<ホームスタジオに最適>
こちらは個人よりもホームスタジオ向けのインターフェース。
まず入出力が豊富なのでバンドのレコーディングにうってつけなのだが、本機の魅力はそれだけではない。
モニターコントロールが3系統存在し、3種類の独立したミックスを作ることができるユニークな設計になっている。
例えばボーカルは出力Aに、ギターは出力Bに、マスター向けに出力Cを、といったようにMIXを必要に応じて切り替えることができる。
またDSPによるハードウェア処理が可能なのでゼロレイテンシーでエフェクトとモニタリングが可能となる。PC負荷の大きかったマルチセッションのレコーディングもスムーズに実施できる。
中級者〜向けになってくるが、手頃な価格なのでバンドでの利用を考えている方にとっては非常にお買い得な製品だ。
▼ 参考動画 ▼
TASCAM US-366-SC
<実況や歌ってみた、機材の少ないDTMer向け>
手頃な価格で機能豊富なオーディオインターフェース。
この価格帯では珍しくデジタル入出力が光もコアキシャルも両方ある。ゲーム機など接続するのに最適だ。
ボタン1つでDSPによるハードウェアエフェクト処理を呼び出せるので、実況中にリバーブをかけるなどの使い方もできる。
DTM用途としても基本的な入出力は備わっているので、今後機材が増えそうにない方であれば、ライトに使い続けられるだろう。
筆者としてはLINE出力がRCA端子とフォーン端子の両方搭載している点も高く評価したい。
コンパクトなボディながらニッチなニーズにも応える実力者だ。
ZOOM UAC-2
<屈指の低レイテンシー>
最速2.2msの超低レイテンシーを誇る製品。
USBバス駆動可能でなのでポータブル利用にも最適だ。
遅延の許されないDJパフォーマンスでの利用や、ストレスのないホームスタジオ構築に最高の1台。
DTM用には基本的なIN/OUTは備えており、遅延を感じずソフトウェアシンセ等の演奏ができるので、使い心地がよい。
DAC性能がよいのでPCオーディオ用途としても役立つだろう。
さらにポート数が必要ならUAC-8(販売サイトへ)もおすすめ。
正直おすすめしないオーディオインターフェース
BEHRINGER XENYX 302USB
ベリンガーは人気機器の回路や製品名を模倣して廉価製品を販売してきたメーカーだ。
本機はI/Fの種類、数、機能性、価格、評価の良さ、どこを見ても魅力的だ。
しかし実は各種インプットの音圧レベルが均一でない。
そして3バンドイコライザーは全く機能していない。
面白いことにフェーダーを動かすと左右の音圧レベルがバラバラになる!
ミキサー機能を期待すると痛い目に遭うのは間違いない。筆者は痛い目に遭った。
中には心底使える機器もあるが、オーディオI/F周りではベリンガーはやめておこう。
Steinberg UR22 MKII
コストも安く初心者に必要な機能を網羅した、ほぼ完璧な製品。売れ行きも抜群。しかし正直過大評価だ。
残念なのはPHONES端子のモニタリングなぜかモノラル再生な点。
そして音圧レベルも低く音質も悪い。
接続不具合も多く音割れもあるため、本格利用はできない。
ライン出力がフォーン端子のみという点は、初心者のモニタースピーカー選びを制限するだろう。
ヘッドホン出力に手を抜いている時点でDTMに使うには厳しい。
歌い手にはややオーバースペックで、DTMerには不足、そんなどっちつかずの存在だ。
オーディオインターフェース選びでよくある質問
iPhoneやAndroidアプリで録音できないの?
答:可能
USBクラス・コンプライアントに対応したオーディオインターフェースなら、変換アダプタをかませることで接続が可能。
また次のようなモバイルデバイスに特化したオーディオインターフェースもある。
LINE6 SONIC PORT
アンプシミュレーターでお馴染みのLINE6のオーディオインターフェース。
iPhoneのGarageBandへの録音などもこれで実現できる。
LINE6の高品質なサウンドを録音しよう。
最近流行のnanaへの投稿にもおすすめ。
IK Multimedia iRig HD
元祖とも言えるモバイルオーディオインターフェースのiRig。
Amplitubeという高品位なアンプシミュレーターアプリで本格的なギター演奏・録音が可能だ。
中古ではだめなの?
答:おすすめしない
オーディオインターフェースの技術は日々進歩しており、昔の機器よりも最新機種の方が遥かに高性能で、価格もどんどん下がっているので、敢えて中古を選ぶメリットはない。
さらに致命的なデメリットとしては次の点が挙げられる。
- メーカーサポートが終了し最新OSに対応できない
- サンプリングレートが低く、プロジェクト全体を低音質に下げなければならない
昔から制作時は極力高音質に、音源化するときに最適なファイルサイズに落とすのが通例だ。
最近ではハイレゾクラス(24bit/192kHz)のサンプリングレートで制作するのが基本なので、折角高音質なソフトウェア音源を手に入れても活かすことが出来なくなる。
できるだけ最新のモデルを選ぶようにしよう。
ループバック機能はあった方がよい?
答:歌ってみたや実況をするなら
ループバック機能とは、PCからの出力に、外部入力の音を乗せて、PCに送り返す機能だ。
これがあるとPCで流した音楽に歌を乗せて、歌ってみたを録音するといったことが可能となる。
あまりDTMでは利用しないが、歌ってみたやウェブキャスティングを行うなら優先度を高めに考えてよいだろう。
専用のスピーカーやヘッドホンも必要?
答:DTMをするなら必ず必要
単純な歌録りならそこまで必要ないが、MIXやマスタリングまで行うのなら必ずモニタースピーカーが必要となる。トラックメイクまではモニターイヤホンでも行うことができるだろう。
オーディオインターフェースとスピーカーそれぞれの端子形状に注意しながら、併せて入門機を手に入れることを強くおすすめしたい。初めて選ぶ場合は次のエントリーを参考にしてみてほしい。
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2in2outとかって何?
答:入力チャンネルと出力チャンネルの数のこと
2in2outなら2×2、2in4outなら2×4という形でも表記される。
注意されたいのは、これがモノラルのチャンネル数を示しているという点。
テレビ等の入出力系統の数え方とは違っていて、2in2outならステレオ入力1系統、ステレオ入力1系統と捉えられる。
特にPCでDJパフォーマンスを行いたい人などは、スピーカー用のステレオ出力と、それとは別にヘッドホン用のステレオ出力が必要となり、最低でも4out以上のインターフェースを手に入れる必要がある。※もちろん対応するソフトウェアも必要
まとめ
いかがだろうか。
はじめて手にするオーディオインターフェースは、つい初心者向けの最小限の機能の製品を手にしがち。
しかし良い音楽制作のためには良い制作環境が必ず必要となってくる。
いつでも思いついたアイデアを試せるように、十分な数・種類のI/Fを確保すること。
そして制作が途切れないように、十分なスペックのPCと低遅延低ノイズのオーディオI/Fを用意すること。
最後に、モニタースピーカー・ヘッドホンで精確なモニタリングを行えるようにすること。
そうしてクオリティの高い音源を生み出すことができる。
これからDTMを始める方は、ぜひオーディオインターフェースにはこだわってほしい。