子どもから大人まで、夜空の星や月を見るのは楽しいもの。今回は、”初心者でも分かる”天体望遠鏡の選び方を解説。また、初心者におすすめの入門機から、少しこだわりたい人向けの中級機まで、おすすめの機種をご紹介します。
望遠鏡最新ニュース
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天体望遠鏡の選び方
天体望遠鏡の種類を選ぶ
天体望遠鏡は、大きく【屈折式天体望遠鏡】と【反射式天体望遠鏡】の2種類に分かれる。違いを表にまとめた。
比較点 | 屈折式 | 反射式 |
---|---|---|
価格帯 | ¥10000~ | ¥30000~ |
倍率 | 低~中倍率 | 低~高倍率 |
メンテナンス | 不要 | 必要 |
操作性 | 簡単 | 少し難しい |
重量 | 軽め | 重め |
初心者におすすめなのは屈折式天体望遠鏡
上記の表にある通り、屈折式天体望遠は、価格も安価で扱いやすいことから、初心者におすすめのタイプだと言える。
初心者の入門機として選ばれることの多いタイプだが、1万円台の機種でも【月のクレーター・木星・土星の輪】など、惑星の模様まで見ることができる。
天体望遠鏡の口径/倍率を選ぶ
天体望遠鏡の種類を絞っても、機種は様々。次は、レンズの口径や倍率で機種を絞っていこう。
口径とは、対物レンズ(対物鏡)の直径指し、口径が大きいほうがより性能が優れていると言える。口径、つまりはレンズが大きいと、以下のようなメリットがある。
- 極限等級が上がる=より暗い星を観測できる
- 分解能/解像力が上がる=より細かく観測できる
- 倍率が上がる=より拡大できる
また、倍率の記載がない機種は、【倍率=対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離】で倍率が求められる。倍率は、接眼レンズ(アイピース)を交換することで変えられる。
倍率による月や惑星の見え方で選ぶ
「口径が広い方が良くて、倍率が高いほうが良く見えるのね。で、どの倍率で何が見えるの?」
という疑問が湧くだろう。目安を表にまとめた。
天体 | 倍率 | どう見えるか |
---|---|---|
月 | 50倍 ~150倍 |
50倍:視野全体に映る 80倍:無数のクレーター |
火星 | 90倍 ~150倍 |
大接近したら模様が見える |
水星 | 60倍 ~100倍 |
三日月形が判別できる |
金星 | 60倍 ~100倍 |
満ち欠けが見える |
土星 | 70倍 ~150倍 |
70倍:環が見える 150倍:しま模様が見える |
二重星 | 40倍 ~150倍 |
100個~見える |
変光星 | 30倍 ~50倍 |
10等級~が500個見える |
星雲/雲団 | 20倍 ~100倍 |
200個~見える |
最低限50倍あれば、天体観測は十分楽しめるだろう。土星や火星を判別したり、細かい模様まで見たいひとは少し上の倍率を選ぶと良いだろう。
同じ口径でもF値によって安定性が変わる
補足となるが、同じ口径の天体望遠鏡でも、焦点距離が長い(つまりはF値の大きい)機種の方が、安定してくっきり天体を見ることができる。
初心者におすすめの屈折式天体望遠鏡
初心者の入門機として最も選ばれる「ラプトル50」
スコープテック ラプトル50 天体望遠鏡セット
初心者の入門機として選ばれることが多いのが、「ラプトル50」。
簡易型架台で組み立ても簡単で、入門機ながら【50mm】の口径と、【75倍】の倍率を兼ね備えたモデル。また、初心者でも迷わず星を探せるよう「星空ガイドブック」が付属。
木星の木目が薄っすらと見えたり、月や土星の輪も見えるため、初心者が楽しむには十分なスペックだろう。
より見える天体が増え、安定性も向上。「ラプトル60」
スコープテック ラプトル60 天体望遠鏡セット
前述の「ラプトル50」と比較検討されることが多い「ラプトル60」。
ラプトル60は、口径が【60mm】と10mm大きくなり、倍率も【85倍】と10倍アップ。三脚が伸縮することで使い勝手も向上した。
スーパームーンや月食、土星の輪っかや火星金星、ガリレオ衛生、なども見える。ラプトル50より口径が大きい分、よりシャープかつ素早く惑星が捉えられることが、優位点としてあるだろう。
倍率133倍の本格派。2台目としても選ばれる「アトラス60」
スコープテック アトラス60 天体望遠鏡セット
「ラプトル50」最大75倍、「ラプトル60」が最大85倍、そして今回ご紹介する「アトラス60」は、本格的な133倍の倍率を誇る上級者にも愛される機種。
他メーカーでも、100倍を超える天体望遠鏡で安価な機種も販売されているが、その倍率に耐えうる架台や三脚が付属しておらず、使い物にならない機種も多い。
しかし「アトラス60」は、そういった細かい部分にも一切妥協しておらず、製品への評価もかなり高い。安心しておすすめできる名機だ。
星雲星団を見るのにぴったり。ミード(MEADE)
MEADE 天体望遠鏡 AZM-70 屈折式 アクロマート 口径70mm 焦点距離700mm 997057
口径が【70mm】F値が【F10】と、安価な価格帯に対してのスペックが高い機種。
特に星雲星団を見たい方におすすめの「軽い」「リーズナブルな価格」「できるだけ大きい口径」という三拍子揃ったモデルと言える。
ファインダー台座付きで、好みの光学ファインダーが取り付けられたり、遮光環が適切に配置されていたり、ドローチューブにガタがなかったりと、しっかりした作りだ。
【補足】VIXENをおすすめしない理由
ご紹介してきた製品と同価格帯で、割と評価も高いメーカーに「VIXEN」がある。
以前家電量販店でVIXENとスコープテック(ラプトルシリーズのメーカー)の違いを聞いてみたら、「VIXENは細部への作り込みが若干甘い」ということを教えて貰った。(例えば鏡筒内の艶消しなど)
価格帯はあまり変わらないのでどちらを選んでも良いとは思うが、もし迷ったらスコープテックにすると無難だろう。
中~上級者におすすめの反射式天体望遠鏡
お手頃価格の反射式天体望遠鏡「MEADE」
MEADE 天体望遠鏡 EQM-127 ニュートン反射式 口径127mm 焦点距離1000mm ブルー 998146
70mmの口径の機種を前述したが、それと同じシリーズで口径が127mmのものもある。
天体の追尾がしやすいよう赤道儀がセットになっており、「ズームしすぎて見失った!」ということにならなくて済む。
また、ワンタッチ式のスチール三脚を採用し、揺れに強く、組立しやすくなった。
Vixen 天体望遠鏡 ポルタII経緯台シリーズ ポルタIIR130Sf 39954-3
反射式天体望遠鏡の中でも、断トツの売れ筋かつ口コミ評価が高いのがこちら。
天体からの光を放物面の主鏡で集め、副鏡で90度折り曲げて接眼部にみちびく反射式鏡筒。シンプルな構造で色収差が発生せず、星像がくっきりシャープに映る。
またF値も7.5あり、視界明るく【星雲・星団】など、なかなか屈折式天体望遠鏡では見られない、淡い天体の観測に適している。
天体望遠鏡の使い方
【はじめに】天体望遠鏡に必要なパーツは揃ってる?
天体望遠鏡は【鏡筒】【三脚】【架台】が無いと機能しない。
【鏡筒】は筒の部分。【三脚】は鏡筒と架台を支える部分。
【架台】はマウントとも呼ばれ望遠鏡と三脚の固定部分のこと。一般的に使われる「経緯台」と、長時間の天体の追尾ができたり、写真撮影がしやすい「赤道儀」の2種類がある。
初心者は”天体望遠鏡セット”と記載がある、この3つが予め揃ったセットを買うと良いだろう。
①天体望遠鏡の組み立て
天体望遠鏡の組み立ては、実際に動画を見て組み立てるのが早い。一番最初にご紹介したラプトル50の動画を掲載しておく。その他の機種ごとに動画が上がっている場合が多いので、検索してみて欲しい。
②ファインダー(ガイドスコープ)の調節
天体望遠鏡の視野は狭く、始めから天体を捉えるのは至難の業。そのため天体観測の前には、ファインダーと鏡筒の光軸を並行にセッティングしておく必要がある。その際、スマホのアプリ「skyview free」で天体を検索するとスムーズ。
③光軸調整
反射式天体望遠鏡の場合のみだが、主鏡の裏にあるスクリューを回転し、斜鏡と接眼筒との位置を合わせル必要がある。
- 鏡筒を接眼レンズで覗いて地上物にピントを合わせる
- ガイドスコープが対象物を捉えるようにネジで調整
- アプリ「skyview free」で土星を検索
- 夜空にかざす
- ガイドスコープを使って、土星を補足
- 視野に入ったら、微動ネジを回す
- 土星がガイドスコープの十字の中心にくるように調節
- 20mm接眼レンズで鏡筒を覗く
- 光が見えていたら、はっきりと見えるようにピントを合わせる
【補足】カメラアダプターと天体望遠鏡を用いた惑星の撮影方法
カメラアダプターと天体望遠鏡固定方法、【カメラブラケット】が必要な場合と、【Tリング】で接続する場合の2種類ある。
【カメラブラケット】が必要な場合はまずステーで固定して、カメラでレンズを覗き込むのと同じように撮影ができる。
【Tリング】で接続する場合は、交換レンズのようにカメラに接続して撮影する。
まとめ
いかがだっただろうか。天体望遠鏡は1万円程度出せば、十分満足できる水準のものが出てきている。まずは低価格帯の製品を購入し、もっと大きく綺麗に見たいと思ってからハイクラスの天体望遠鏡を購入しても良いのではないだろうか。