スマホやPCの音質をぐんと上げられるDAC。最近は安い価格でもハイレゾ対応の機種が増えました。今回は対応デバイスの多いUSB接続を採用したDAC搭載ヘッドホンアンプについて、選定のための比較ポイントやおすすめの機種をご紹介します。
DACとは
DAC(ダック)とは、Digital Analog Converter(デジタル-アナログ変換回路)の略称で、デジタル電気信号をアナログ電気信号に変化する機構のことを指す。
イヤホンやスピーカーはアナログ電気信号によって振動を起こし作動するため、デジタルオーディオプレイヤーで出力したデジタル電気信号は、途中でアナログ電気信号に変換しなければ音声を聴くことは出来ない。
スマホでは内蔵DACで変換したアナログ信号を内蔵アンプで増幅しイヤホンジャックから出力している。
ただスマホなどのDAC、内蔵アンプは省電力化を優先しており音質は二の次。これではどんなに良いヘッドホンを使っても音の粗がより一層見えてしまう。
USB DACとは
そこでスマホではD/A(デジタル・アナログ)変換を行わないという方法がある。
デジタル信号をUSB経由で外部DACに接続し、外部DAC側で十分な電力を用いて音質劣化させないように変換するのだ。
多くはDACとアンプが一体型となっており、D/A変換と増幅の両面でグレードアップを図ることができ、その音質の違いはオーディオ初心者でも明確に分かる。なおDAC内蔵のスピーカーもある。
アンプについては別記事「ポータブル/据え置きヘッドホンアンプのおすすめモデル6選」、「ポタアン(ポータブルヘッドホンアンプ)の効果やおすすめ機種をご紹介」でも紹介しているので参考にされたい。
こうしたメリットの多いUSB DACだが様々なモデルが流通しているので、なかでもおすすめのものを紹介していこう。
おすすめのDAC搭載ヘッドホンアンプ
【ポータブルヘッドホンアンプ(ポタアン)】
audioquest DRAGONFLY Red
オーディオクエスト社の販売するDRAGONFLYシリーズのRedモデルはUSBスティック型だ(BlackはDACチップが異なり出力も小さい)。
出力は2.1Vとこのサイズではかなり大きい。ハイインピーダンスの高級ヘッドホンもしっかりと鳴らしてくれるはずだ。
小さめのUSBスティックサイズの超小型設計で、ヘッドホンを鳴らしたいという方にはDRAGONFLY Redをおすすめする。
そこまでインピーダンスの高くないイヤホンなどの利用で、まずコンパクトに音質改善をしたい場合は、次に紹介するM-AUDIO Micro DACか、このDRAGONFLYのBlackモデルを選ぶとよいだろう。
M-AUDIO MICRO DAC 24/192
DTMが好きな人なら誰でも知っているM-AUDIO。オーディオインターフェースやキーボードの製作を昔から得意としており、USB DACの開発はまさに同ブランドのお家芸なのだ。
今回ご紹介する「MICRO DAC」は、iPhoneやノートPCでのポータブルユースを想定して、超小型設計されたUSB DACだ。
殆どUSBメモリーと変わらない大きさであるため、鞄のポケットやポーチに入れても邪魔にならない。
このサイズでなんと24bit/192kHzのハイレゾ音源再生に対応している。
ヘッドホン端子に加え、ヘッドホン対応光デジタル端子も搭載しているので、2台のヘッドホンで音楽を共有したり、外部のオーディオ機器へ光デジタル出力を行うこともできる。
そして常識を打ち破る驚くべき低価格でこの機能を実現している。これからポータブルシーンでハイレゾを楽しみたい方、まず本機を手にしてみることをおすすめしたい。
なおiPhoneに接続する場合は、別途Lightning-USB変換アダプタを入手しよう。Androidの場合はUSBOTGケーブルを用意しよう。
JVC KENWOOD SU-AX01
JVCのフルバランス構成のポタアン。
フルバランス構成のアナログ回路を搭載しており、解像度の高さと音場感に優れている。
大電流トランジスタを使用し大型ヘッドホンでも緻密でパワフルなサウンドを楽しめる。
イン/アウトが両方前面にあり、鞄の中でもケーブルを傷めにくい、エクステリアデザインにもJVCらしいこだわりが見える一品だ。
最新の384kHz/32bit、DSD11.2MHzハイレゾ音源再生に対応している。
多様な接続方式にも対応しており、プレミアムモデルとして作り込まれた本作はポータブルシーンだけでも宅内でも使いたくなるおすすめの機種だ。
SONY PHA-2A
JEITA統一規格の4.4mmバランス接続に対応した初めてのポタアン。
PCMは192kHz/32bit、DSDは5.6MHzまで対応し高性能を追究した本モデルは、ウォークマンやスマホでリッチなオーディオを楽しむ最適解となるだろう。
OPPO HA-2SE
高性能な384kHz/32bit、DSD12.2MHz対応DAC搭載ののハイレゾ対応ポタアン。
モバイルバッテリーとしても使え、スリムなボディでスマホとの相性がとてもよい。
前作よりも性能が上がりコストパフォーマンスは上がっている。いま勢いのあるOPPOのHA-2SEを今のうち手に入れておこう。
ポタアンとしては究極系とも言える同社の「Hugo」の後発。
Hugoの強みを継承しつつ小型化を遂げ、Mojoは数あるポタアンの中でも人気作となっている。
さらにDACに関してはHugoを上回るPCM32bit/768kHz、DSD256までの対応で超高音質化に成功している。
性能・接続性どれをとっても優れたMojoは、間違いないポタアンを手にしたい方におすすめだ。
ONKYO DAC-HA200
ハイレゾ対応ポタアンのエントリー機、DAC-HA200を紹介しよう。
ポケットサイズの薄型設計の本モデルは、24bit/96kHzハイレゾ音源に対応。iPhone/Android/PCなどの音楽環境を大きくランクアップさせてくれる。
これまでハイレゾは敷居が高いと考えていた方も、本機でずっと身近なものになるに違いない。
音質面は、ONKYOらしい中域付近のクリアさが感じられるが、低域をふくめて全体的にまろやかな音の印象だ。オペアンプにはMUSES8920を採用しオーディオファンにも納得いく仕様となっている。
本機はこれからポタアンデビューしようと考えている方におすすめしたい。
ULTRASONE NAOS
2017年9月中旬発売のULTRASONEの最新DAC内蔵ポタアン。
最大の特長はわずか6gという軽さ。ポータブルオーディオは重量が増えがちだがこれだと邪魔にならない。
コンパクトで軽量だが、設計は本格的。ハイエンドな仕様で定評あるULTRASONEのヘッドホンを最適に鳴らすことが想定されている。
PCM 192kHz/24bitのハイレゾ再生に対応しており、また接続端子も4種類付け替えることができるので、ハードを選ばず多くのデバイスで利用できるだろう(DSD非対応)。
iFi-Audio nano iDSD
ネイティブDSDもサポートする本格ハイレゾポタアン。
PCM 32/384kHz, DSD 6.2MHz, DXD 384kHz というハイスペックを誇るコスパ抜群のプロダクトだ。
10時間以上再生可能な内蔵バッテリーも装備していながら筐体サイズは大きすぎず、十分なポータビリティを備えている。
音質面は、全体的に角が丸く、タイトめな低域と伸びる中高域を高い解像度で感じることができる。
デジタル同軸出力もあるので、モバイル機器だけでなくハイエンド機も鳴らすことができる。
【据え置き型ヘッドホンアンプ】
marantz HA-DAC1/FN
マランツ初のUSB-DAC搭載ヘッドホンアンプ。
PCからのDSD信号(2.8/5.6MHz)の入力に対応しており、ASIOドライバおよびDoP(DSD Audio over PCM Frames)の両方に対応しているため、低レイテンシーで高音質なサウンドを再生することができる。
PCM信号についてはもちろんハイレゾ(24bit/192kHz)まで対応。クロック制御をデバイス側でなくHD-DAC側の高精度回路で行えるため、デバイス側ジッターに左右されない工夫が凝らしてある。
iPhone充電機能なども備えており、あらゆるデバイスで最高のパフォーマンスが出せるようチューニングに抜かりがない。
サウンドはマランツらしく、中域に艷のあるすっきりとした印象。主張しすぎない音色はずっと聴いていて心地がよい。
万能でハイパフォーマンスなヘッドホンアンプを求めている方におすすめだ。
DENON DA-310USB
PCMは384kHz/32bit、DSDは11.2MHzという最高レベルのHi-Fiサウンド再生に対応したヘッドホンアンプ。
対応インピーダンスはなんと600Ωまでと、どんなヘッドホンも鳴らし切るパワーを有している。
縦置きにも変更可能なので狭いデスクトップにも配置可能と、ユーザビリティを配慮していて嬉しい。
原音の忠実さを求めるなら本機はベストな選択の1つだろう。
OPPO HA-1
ノイトリック社製の4ピンXLRバランス接続対応のヘッドホンアンプ。
USB接続でPCMは384kHz/32bit、DSDは11.2MHzまで対応し、最新のハイレゾ音源再生をサポートする。
さらにBluetoothにも対応し、妥協のない高性能な仕様となっている。
SONY TA-ZH1ES
最新の4.4mm、そして4ピンXLR、3.5mmx2といったバランス接続、標準ステレオ端子、ステレオミニ端子といった、あらゆるヘッドホン端子接続に対応するヘッドホンアンプ。
PCMは768kHz/32bit、DSDは22.4MHzまで対応した最高峰のハイレゾ音源対応機種だ。
Soundfort DS-100+
コスパが高くハイレゾ入門者におすすめの1台。DS-100の後継機種となる。
DACには「PCM1798DB」、ヘッドホンアンプには「TPA6120A2」など、1クラス上の高性能パーツを採用し、同価格帯の他機種と比較しても群を抜いた性能。
はっきりとした音の輪郭が特長だ。24bit/96kHzPCM再生、ASIOドライバでDSD2.8MHzネイティブ再生(Win)も可能。
ONKYO DAC-1000
32bit/192kHzハイレゾ音源再生に対応した高品位な据え置きDAC。
ジッター、ノイズ対策が丁寧に施され、ボディも強固なアルミ+スチール製でしっかり共振を抑える。
XLRバランス、アンバランス、光デジタル出力が可能なので様々な環境に接続しやすい点も魅力的。
本格ハイレゾを求める方におすすめ。
GRACE design m900
スタジオユースを想定したクリエイター向けのヘッドホンアンプ。
AKM 4490 DACチップを採用しており、PCM 384kHz/32bit、DSD 11.2MHz(256x)をフルサポートと本格仕様。
デジタル入力はUSB、S/PDIF、Toslinkの合計3系統入力。
JVC KENWOOD KA-NA7
コンパクトな環境に最適な小型のDAC内蔵アンプ。
ヘッドホンアンプとして使えばハイレゾ音源(PCM 192kHz/24bit)を楽しめる。
NFCでスマホとのBluetoothペアリングも簡単だ。光デジタル端子もあるのでテレビやゲーム機の音声を高音質で再生することも。
手軽で高機能なDACを求めるならこれ。
DAC搭載ヘッドホンアンプの選び方
利用シーンで選ぶ
据え置きアンプ
いつも自宅内の同じ位置で音楽を聴くことが多い方は、据え置き型のヘッドホンアンプを選ぼう。
一般的にポータブルアンプより据え置き型の方が音質面で優れているため、わざわざヘッドホンアンプを移動させる必要がないのであれば、据え置き型を選ぶべきだ。
個人の感覚にもよるが、据え置き型はヘッドホン本来の鳴りをより一層引き出してくれる傾向にある。
デスクサイドのシェルフに小型プレーヤーと共に設置したり、PCやポータブルプレーヤーと接続の容易な箇所に設置して、インテリアにもなるだろう。
ポータブルアンプ
逆にヘッドホンアンプを持ち歩き移動したい場合、コンセントへの接続が難しい場合などはポータブル型を選ぼう。
自宅内で部屋を移動して使う、通勤通学で使う、アウトドアで使うなど様々なシーンでオーディオデバイスのポータビリティが要求される方が当て嵌まるだろう。
音質で選ぶ
ハイレゾ対応か
DACは情報量の多い音源データを変換できるかによってハイレゾ対応かどうかが変わってくる。具体的にはPCMにおいてはサンプリング周波数が96kHz以上、量子化ビット数が24bit以上に対応していると嬉しい。DSD対応もあるとなおよいだろう。
サイズで選ぶ
据え置き型の場合は、設置箇所の奥行き、高さ、広さ、ケーブリングに余裕がありそうか確認しておくと安心だ。
ポータブルヘッドホンアンプについては、サイズ・重量ともにしっかり見ておきたい。
特にサイズについてだが、iPhoneなどスマホユーザー向けに、あえてスマホに近しいサイズ感でデザインされているポタアンも存在し、持ち運びの際にバンドで固定すれば邪魔にならない。
実際の設置イメージや、持ち運びイメージをもって、どの程度なら実用性があるか自身の許容範囲を考えておこう。
最後に
いかがだろうか。
お気に入りのDACを見つけて、これまでとは違う音質の世界を楽しんでいただきたい。
またDJやDTMerといったクリエイティブな分野にいる方も、DACを使うことでiPhoneやiPadのシンセサイザーを使う上で音質面をクリアできるため、ぜひ使ってみてほしい。
これを機会にヘッドホンだけでなく、まず良い音を出力するところからはじめてみよう。