ドキュメントスキャナは自炊用途やペーパーレス化に欠かせない存在。今日ではCanonやbrotherといった大手メーカーが様々な方式のスキャナを販売しています。各方式毎に、その特徴や比較点を交えながらおすすめのモデルをご紹介していきます。
目次
ドキュメントスキャナとは
ドキュメントスキャナーとは、書籍や雑誌など紙の文書をデジタルデータとして読み取ることに特化したスキャナーのこと。
中には写真やフィルムなど紙以外のメディアまでカバーするものもある。
基本的にはPDFやJPGといったファイル形式で保存を行う。
最近のモデルはワイヤレス化やPCレス化が進み、クラウドストレージサービスとの連携にも対応するものが多い。
おすすめのドキュメントスキャナ
ここでは大きく次の方式のスキャナについて紹介し、その後それぞれの方式の選び方について解説していく。
順番に読まれない方は以下リンクより該当項をご覧いただきたい。(このページ内を移動します)
シートフィード型ドキュメントスキャナ
▼ A4紙での同等クラス機種のスペック比較表
機種 | 分間読取速度(モノ) | 分間読取速度(カラー) | 給紙容量 |
---|---|---|---|
iX500 | 25枚(300dpi)/25枚(600dpi) | 25枚(300dpi)/14枚(300dpi) | 50枚 |
DR-C225W | 25枚(300dpi)/13枚(300dpi) | 15枚(300dpi)/4枚(300dpi) | 30枚 |
DS-570W | 35枚(300dpi)/17枚(600dpi)* | 35枚(300dpi)/17枚(600dpi)* | 50枚 |
ADS-2800W | 30枚(300dpi)/24枚(600dpi) | 30枚(300dpi)/12枚(600dpi) | 30枚 |
*メーカー公開のmsec/line値から算出の理論値
FUJITSU ScanSnap iX500
自炊用スキャナーの代名詞と言ってもいいほど人気の定番モデル。
カラー300dpi、モノ600dpiまでならどの解像度でも両面印刷で50面の高速読取りが可能、さらに給紙容量のA4用紙50枚と大きい。
インターフェースもUSB3.0やWi-Fiに対応し利便性も高い。
実績あるプロダクトなのでこのクラスのモデルでは最もおすすめ。
Canon imageFORMULA DR-C225W
Canonで最も人気のドキュメントスキャナー。
同型の中ではかなり小型で、価格も安いので、コストパフォーマンスを重視したい方におすすめだ。
カラーの読取りは少々遅いので白黒での自炊をメインに考えている方向け。
EPSON DS-570W
EPSONの売れ筋ドキュメントスキャナー。
リーズナブルなコストながら、トップレベルの読取りスピードをもつモデル。
ScanSnap iX500と迷うところだが、カラーの読取り速度でこちらに軍配が上がるので、メイン用途が白黒かカラーかで決めてもよいだろう。
また本製品はリリーズ日が最近でサポート期間も長いというアドバンテージもある。
なおハイエンド機種のDS-860では、65枚/分、80枚給紙に対応するので、さらにスペックを求めるなら併せて確認してみてほしい。
brother JUSTIO ADS-2800W
タッチパネルで操作もしやすく、PCレスでDropboxなどクラウドストレージへの保存も可能。
安定した給紙速度と給紙枚数で、カラー液晶パネルで操作もスムーズ。
少しのコスト増で上記機種のADS-3600Wにすれば、大幅にスペックが上がるのでそちらも検討してみてほしい。
Canon DR-M260
キヤノンの最新型ハイエンドシートフィード型スキャナ。
カラー/グレー/白黒いずれも片面60枚/分、両面120面/分(A4タテ・200dpi)という高速な読取り性能をもつ。
最大5,588mmの長尺スキャンにも対応し、多彩なドキュメントに対応する。
新プロセッサー搭載によりスキャナ側で画像処理の多くを担うことが可能となったため、スペックの低いPCでも余裕のOCR処理が可能となる。
メンテナンスも簡単な設計なため、これから上級機種を選ぼうと考えている方には是非おすすめしたい。
EPSON DS-780
薄紙から厚紙に対応した新製品。片面で45枚/分、両面90面/分の高速スキャンを実現。
破れやすい薄紙や皺入りの紙は「低速モード」で綺麗にスキャン可能。重送検知可能なので付箋付きの用紙もスキャン可能だ。
100万ページに耐える仕様なのでスキャンボリュームがあっても安心のモデル。
裁断機のおすすめ
当然ながらシートフィード方式で自炊する場合には裁断機が必要となってくる。
後の余白トリミングの調整の手間などを考えれば、裁断のタイミングである程度用紙サイズを整えられると効率があがる。
細かな裁断が発生する場合は裁断性能が強く影響するので、スキャナより寧ろ裁断機こそあまりコストを惜しまないことをおすすめする。
非常にスリムでコンパクトながら、50枚裁断が可能な高効率の裁断機。
DC-210Nも定番だが、新型機のこちらの方が枚数も多くコンパクトで、50枚という枚数がScanSnap iX500とも相性がよい。
オーバーヘッド型ドキュメントスキャナ
FUJITSU ScanSnap SV600
コンシューマー向けのオーバーヘッド型スキャナで本格的な自炊をするなら、選択肢はこの機種1つだ。
見開きページを自動分割し高精度な歪み補正をしてくれる。
なお1枚あたり3秒でスキャンとストレスのない速さ。
非破壊で分厚い本までスキャンしたいなら本機を選ぼう。
PFU SNAPLITE
自炊には向かないが、iPhoneで名刺やカードなど小サイズのものをスキャンしたいときにおすすめのスキャナー。
スタイリッシュなデザインが非常に魅力的で、デスクライトとしても機能する。
KINGJIM デスクショット
非常にコンパクトでスタイリッシュなデザインが魅力的なスキャナ。
A4でおよそ160dpiなので自炊には不向き。
画質を求めずリーズナブルで置き場所に困らないスキャナを探しているなら最適なモデルだろう。
ハンディ型ドキュメントスキャナ
SANWA SUPPLY 400-SCN032
コードレスで自炊にも使えるOCRソフト付きハンディスキャナー。(OCRソフトはWinのみ対応)
300/600/900dpiの解像度モードをもち、用途に合わせて使い分け可能。
手元の液晶モニタで、おおよそのスキャン結果を確認できるのでやり直しの手間が減る。
A4の21.6cm幅で、120cmの長さまで一度にスキャンできる。
microSDかUSB接続でメディア保存可能だ。
Aoleca ハンディスキャナ
ハンディスキャナのなかでも特に人気の高いモデル。
こちらはコード式だが非常にリーズナブルな価格となっている。
SANWAのモデルのように小型液晶での確認や、コードレスというわけにはいかないが、その他は近しいスペックでありコストを抑えたい方におすすめ。
付属OCRソフトも精度が高い(こちらもWinのみ)。
なおデータ保存はmicroSDに行う。
フラットヘッド型ドキュメントスキャナ
plustek OpticBook 3800
フラットヘッド型のブックスキャナの人気モデル。
エッジを6mmまで詰めて、本を破壊せずにスキャンすることが可能になっている。
300dpiで7秒スキャンなので量を要する自炊には向かないが、フラットヘッド型での自炊対応機を探すなら最も有力な候補となるだろう。
Canon CanoScan LiDE220
自炊ではなく通常のドキュメントスキャン用途で、フラットヘッドを選ぶならこのモデルが非常にコストパフォーマンスが高い。
まず軽量薄型で、USBバスパワーにも対応し、縦置きでも使える手軽さが素晴らしい。USB駆動でもウォームアップが必要ない点も好評価。
コストも非常にリーズナブルだが、4800dpiの高解像度スキャンにも対応している。
EPSON GT-S650
こちらもコストパフォーマンスの高いスキャナー。
CanoScanと大きく変わりはないが、若干こちらの方が軽い。
ドキュメントスキャナの選び方
4つの種類から選ぶ
ドキュメントスキャナには大きく4つのタイプがある。他にもフォトスキャンに特化したものやスマホ連動を重視したものがあるが、ドキュメント用としては主流でないので割愛する。
▼ 各タイプの特徴と利点・欠点
スキャナタイプ | 特徴 | 利点 | 欠点 |
シートフィード | セットした紙をローラーで送って読み取る 主に同サイズの大量ページの自炊に利用 |
量に強い 最速 両面可能 |
本の破壊必要 紙サイズ限定 薄い紙限定 |
オーバーヘッド (スタンド) |
カメラ付きアームで上部から撮影し読み取る 複数サイズの破壊できない書籍の自炊に利用 |
厚みに強い 本の破壊不要 半自動 |
1枚スキャン 両面不可 |
ハンディ | 紙の上でスキャナを手で動かし読み取る 少数ドキュメントのスキャンや 名刺などカード類のスキャンに利用 |
小型で手軽 本の破壊不要 厚みに強い 安い |
1枚スキャン |
フラットヘッド | コピー機の様に1枚ずつ読み取る 写真フィルムなどもスキャンする |
厚みに強い 本の破壊不要 |
1枚スキャン 両面不可 |
全タイプ共通の6つの比較ポイント
1.読み取り速度
1枚当たりのスキャン時間は最も重要な指標の1つだ。
特にスキャン枚数が多くなる自炊目的の場合は最重要項目と言ってもよい。
待ち時間は何もできないので極力速いモデルを選ぼう。
2.解像度
解像度とはどれだけスキャン対象を鮮明に読み取れるか、その能力のこと。
一般にdpi(dots Per Inch)という単位で表される。
これは1インチあたりにどれだけの粒(画素)が詰まっているか、その密度と思えばよい。
もちろん高ければ高い方が鮮明になるが、それだけファイルサイズや読み取る時間は大きくなるので、利用用途に合わせて必要十分な解像度をもつモデルを選ぼう。
▼ 目的ごとの必要な解像度の目安値
目的 | 最低基準(dpi) | 最高基準(dpi) |
---|---|---|
文字 | 150 | 300 |
写真・画像 | 300 | 600 |
フィルム | 1,200 | 2,400 |
3.歪み補正
シートフィード方式なら、斜めに給紙されることによる歪み、その他の方式なら紙面の凹凸による歪みも含めてスキャン画像に反映されてしまう。
それをソフトウェア制御でいかに角度補正できるかは製品によって異なってくる。
極力補正能力の高いモデルを選ぼう。特にハンディ方式は手動のためブレが大きくなる傾向にあり、補正力はやり直しの軽減に直結してくる。
4.対応サイズ
単行本やコミック本のサイズで良いのか、あるいはA4サイズやそれ以上まで対応する必要があるのか、自身の用途と相談ししっかり確認しておこう。
5.接続方法と対応メディア
最近ではWi-FiやBluetoothでのワイヤレス接続可能なモデルが多く、ドキュメント保存先もノートPCやタブレットを選択できるものもある。
多くはUSB接続での出力や、microSDカードやUSBメモリへの出力に対応するので、自身の利用シーンを考えて最適なアウトプットができるモデルを選ぼう。
6.付属ソフトと対応OS
PDF編集ソフトや、専用のOCRソフトなど、どういったソフトが付属しているのかも重要だ。
別途ソフトを用意するコストは省け、すぐ使える利点がある。
また、それらのソフトやそもそもドライバーが手持ちのデバイスに対応しているかどうかもしっかり確認しておこう。
シートフィード型ドキュメントスキャナの選び方
4つの比較ポイント
1.給紙可能枚数
シートフィード方式は複数枚を読み取ることを前提としている。
一度にセットできる枚数が多いほど、ドキュメントをセットするのにかかる時間が減り、スキャナの前で待機する必要もなくなる。
大量ドキュメントを読み取るかどうかにもよるが、自炊をメインに考える場合にはシートフィード方式の中でも小型モバイルスキャナー系は候補から外してしまったもよいだろう。
2.読み取り速度
自炊を行う場合はドキュメントが多くなりがちで、スキャンを複数回に分けることはよくあることだ。
そんなとき、一度のスキャンが低速であれば無駄な時間を過ごしてしまいかねない。
速さと解像度の高さはトレードオフだが、自身が最も多用するであろう解像度設定を基準に、各モデルの速度を比較してみることをおすすめする。
3.重送検知機能
一度に2枚以上のシートを給紙してしまい落丁が発生しないようにする防止機構のことだ。
昨今のシートフィード型スキャナでは大抵装備されているが、基本的な部分なのでこの点の精度に問題がないモデルを選ばれたい。
4.裏写り補正機能
厚みの薄いドキュメントを読み取ると、裏面の印刷までスキャンしてしまうこともある。
これは機種によって多少能力の差が出て来る機能だ。
もしも昔の文庫本のような薄い紙を読み取る予定なら、この点の能力の差に気をつけておこう。
モバイルプリンターの場合
シートフィードプリンタにはモバイルタイプのモデルもある。
沢山の用紙をセットできず1枚ずつシートを送って読み取るものが多く、機能を省いた代わりに小型化を実現している。
自炊よりも出先でのビジネス文書読み取りなどに役立つが、この場合は次の点に注目するとよいだろう。
1.PDF、JPGに対応するか
ビジネスシーンで最も耳にするセリフの1つは「PDFでお願いします」だ。
社内で「画像でください」と言われることもしばしば。
少なくとも上記2タイプは必須フォーマットだ。
2.OCRソフトがあるか
さらに「テキストに起こして」と言われるかもしれない。
早急な対応を求められるのであればOCRソフトで画像をテキスト変換できるとスムーズに仕事が進む。
3.駆動方式
充電式バッテリー駆動で、USBバスパワー充電が可能なものが今日では最も使いやすいだろう。
他にも電池式、USBバスパワー駆動、AC電源駆動などあるが、できればAC電源駆動は避けたいところだ。
オーバーヘッド型ドキュメントスキャナの選び方
3つの比較ポイント
1.ページめくり判定機能
自炊の場合は、この機能は必須と言ってもよい。
オーバーヘッド型スキャナの中には、スキャナ下で書籍のページをめくると、自動でページめくりを検知し、次のスキャンを開始してくれるモデルもある。
こうしたモデルを導入すればスキャナを操作する手間が省け、スムーズに自炊が進む。
2.必要なスペース
オーバーヘッド型スキャナが他の方式と異なる点は、機器のサイズと設置スペースの大きさが等しくない点だ。
高さはもちろんのことだが、考慮すべきは「奥行き」だ。
スタンドの脚部とドキュメント読み取り範囲が近ければ近いほど奥行きは短くて済む。
スキャンする用紙サイズにもよるので、ある程度余裕をもってスペースが確保できることが設置条件となってくる。
3.付属ソフト
ここでも敢えて再び付属ソフトについて言及するのは、オーバーヘッド方式は特に歪みが発生しやすいためだ。
台形補正や婉曲補正が非常に重要なため、付属ソフトの性能や使い勝手は見落とせないポイントとなってくる。
ドキュメント量が多い想定なら、自動で見開きページの左右を判断し、それぞれに高い精度で補正をかけてくれる、手動の手間がかからないソフトをもつものを選ばれたい。
ハンディ型ドキュメントスキャナの選び方
主な比較ポイントは、先に述べたモバイルプリンターの場合とほぼ同じだ。
以下にポータビリティがあり、場所を取らず高性能化がハンディ型のポイントとなる。
フラットヘッド型ドキュメントスキャナの選び方
前提としてCCDかCISか
フラットヘッド型スキャナには2種類の読み取り方式がある。技術的な説明は割愛するが、それぞれ次の様な特徴がある。
方式 | 特徴 | |
---|---|---|
CCD | 読み取り機構が大きく大型 凹凸や浮きがあっても読み取れる 読み取りが速い |
|
CIS | 読み取り機構が小さくかなり薄型 USBバスパワーでも動く省電力 ウォームアップが完了するまで待機が必要 |
もし自炊用途なら迷わずCCD方式のモデルを選ぼう。本を開いた際に中心部が読めなければ役に立たない。
用紙のはみ出しや浮きに対応するか
書籍を破壊せずに自炊を行う場合は、本を見開いて片ページだけスキャナにセットすることになる。
そうした場合、スキャナの四方に縁があると、セット時に微調整が必要となり慣れと時間を要してしまう。
書籍のセットを考慮して一辺あるいは二辺に縁がないモデルを選ぼう。
また、厚みがある書籍で蓋が閉まらないという場合もある。
蓋が閉まらなくとも問題ない、あるいは蓋が取り外せるモデルを選ぶとよいだろう。
フィルムに対応するか
フィルム読み取り用トレイを持ちネガフィルム、さらにはポジフィルムを読み取ることができるかどうか、フィルムを扱う方にとっては重要なポイントとなる。
フラットヘッドの最も得意とする点なので、必要とする場合にはフィルム読み取り枚数や解像度の高さを確認しておこう。
なお、写真用途のみであれば、フィルム専用、写真専用スキャナもあるので別方式を検討するのも良いだろう。
最後に
スキャナには豊富な種類があり、どれを選んでよいか迷いがちだ。
今回はそんな中でもドキュメントスキャンを行うにあたって最適なモデルをご紹介した。
文書の電子化需要は高まり、さらに電子化した文書もタブレットや電子書籍リーダーで手軽に持ち運べる時代となった。
これを機会に断捨離も兼ねて、ドキュメントスキャナで手持ちの文書を整理してみてはいかがだろうか。